会議で発言を求めたとき、いつ終わるのかわからないような長い発言や、参加者それぞれから多様な発言が出るとどこを捉えて進めていけばいいのか困ってしまうことはありませんか?
進行側は発言の対処に困ると、進行したい気持ちとのジレンマで動揺してしまうでしょうし、参加者側であれば議論の出口が見えず不安が増してしまうことでしょう。会議は時間が限られていますから明確な答えにたどり着けなければ信頼や業績にも悪影響になります。
そこでこの記事では、会議の対応力がアップする言葉とその効果や重要性を紹介します。「つまり」「そもそも」「そうなんですね」という3つの言葉になります。
話し合いをうまくまとめる力がつく
的を得た話し合いを展開できる
話し合いの中で険悪なムードを回避できる
こんにちは、当サイト(ワクワク会議研究所)の所長です。私は企業団体の会議に10年間取り組み、今は企業の会議改善コンサルタントをしています。しかしその過程では、有意義な会議を開催できるようになるまで沢山の失敗を重ねてきました。
いろんな発言にどう対処していいかわからなくて会議が怖いです。
対処のパターンが見えてくるからとても役に立つと思うよ。
「つまり」で要約力を発揮しよう
何かの話の後に、「つまり」から話し始めることで自然と重要なポイントに絞ったまとめの発言ができます。聞き手だけでなく話し手自身も情報整理が進むので一番におススメしたい言葉です。
「重要なポイントに絞ってまとめること。」つまり要約ってことですね。
お、早速使ったんだね。理解できたようで何より。
要約は他にも良い効果が期待できます。
いくつもの発言を要約できると、個別の発言同士の関連性もわかりやすくなる
という事です。
会議は基本的に会話のやりとりになりますので参加者同士の理解がズレやすく、またズレていることに気づきにくい特徴があります。だからこそ、違う言葉で短く要点を繰り返す「要約」が効果を発揮するわけです。
要約できればいいので「つまり」以外に「ということは」も使えるし、もっと話し言葉にすると「それって」という言葉も使えると思うよ。
「まとめると」も使えそう
要約の例として、外務省のHPにあるSDGsの説明をまとめてみます。
持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)とは,2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として,2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された,2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。SDGsは発展途上国のみならず,先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり,日本としても積極的に取り組んでいます。
外務省 Japan SDGs Action Platform 持続可能な開発目標SDGsとは
要約:SDGsとは2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標で発展途上国も先進国も積極的に取り組んでいます。
ここでは経緯(ミレニアム開発目標の後継、サミットでの採択、アジェンダのの記載)、細かな数字(17、169)、普段聞きなれない言葉(誰一人・・・、ユニバーサル)などを省きました。
逆に、主語になる「発展途上国も先進国も」は、世界中の国々という点が重要と考えあえて残しました。
要約しようとすると、思考に「どこが重要なのかな?」という意識が働く点が大切です。
他人の発言を要約する場合は質問型にしましょう。「あなたの言いたいことはつまり・・・です」と断定した言い方だと、相手によっては自分を下の立場と強調されたように感じてしまい、関係が悪くなる可能性もあります。
「(あなたの言いたいことは)つまり・・・であっていますか?」であれば確認をとる姿勢として感じられます。確認は理解しようとしているサインでもあるので、相手に良い印象を持たれやすくなります。
「そもそも」で根本に立ち返ろう
この言葉を使うと、向き合うべき本質的な問題を見つめなおすことができます。使うタイミングは議論が脱線していると思った時や、そうでなくても明確な答えにたどり着かず議論が堂々巡りになっていると思った時などです。
議論の脱線や行き詰まりで
なぜこの言葉が会議で効果的なのかというと、議論のスタート地点に足並みを揃えることができるからです。
例えば議論の脱線とは、会議参加者それぞれに論点の意識が薄くなり、自分の思ったことを基準に意見のキャッチボールをしている状況です。
参加者の中には、脱線に違和感を感じている方もいるかもしれません。どう介入していいかが分かっていなかったり、介入のタイミングを計っている場合もあるでしょう。なんにせよ、それぞれの意識がバラバラであることが想像できます。
堂々巡りの議論ではどうでしょうか。たどり着きたいゴールに近づいている気がするが、何か要素が不足していると感じているがそれが何かわからない。もしくは不足していること自体に気づいていない状況です。
迷路の行き止まりで壁を見つめているような感覚と言えます。
雑談であれば脱線も迷走も会話の楽しさの一部ですが、会議は生産性が求められます。決まった時間の中で会議のゴール(合意形成など)にたどり着かなければなりません。
そんな時に、このように切り出してみましょう。
「そもそも何の疑問からこの話になったんでしたっけ?」
「そもそも何が問題でこの状況が起きているんでしょうね?」
「そもそも私たちはどこを目指していましたっけ?」
議論の最初に私たちは何を見据えていたのか、視点がそろう意見交換が始まることでしょう。そこから建設的な議論をやりなおすことができます。
話が長い人への対応に
会議中に誰かが長い話を始めてしまった時にも効果的です。
「大事なお話と思うのですが、○○という論点とどこが結びつくのかちょっとわからなくて・・・」
のように、相手を尊重しつつ、相手が議論のスタートを意識できる言葉かけができます。
話が長いということは、議論に必要のない情報を発言していたり、他の人の発言機会を奪ってしまう行為になるため生産性が低い状況と言えます。そんな人と対峙した際、発言を大事にしたいと思う人や、発言を切り上げてもらうことに戸惑う人ほど、長い話を放置していまいがちです。
気づけば何を明確にしたくて話し合いが始まったのかを見失ってしまうわけです。そんな時こそ「そもそも」の出番です。慌てずに議論のスタート地点や目的を確認しましょう。
自分にも使える
また、別の方法として、会議参加者に投げかけるのではなく自問する使い方もできます。
(あれ?そもそも何を言いたくて今発言してたっけ?)
(そもそもこの人は議論に参加することで何を得ようとしているんだろう?)
前述の「つまり」にも共通していることですが、これらの言葉使ったとたんに状況を俯瞰する効果が発揮されるわけです。
コミュニティでも会社組織でも、役割分担と各自の生産性向上で全体としての成果が生まれますが、個別に最適化され続けると、全体として最適化からずれてしまう事があります。俯瞰の視点を持つことは全体最適に沿っているかどうかを確認することに繋がります。
「そうなんですね」で相手を受け止めよう
この言葉を使うと、発言を受け止めたと示し、対話のキャッチボールを区切ることができます。反対意見や、論点から外れた意見にも使えるので、議論の脱線を防ぐことができ慌てず冷静さを保つことにつながります。
反対意見とかにも?本当に使えるんですか?
試しにやってみよう。ここは暖かいですか?
暖かいです。
私は寒いです。
そうなんですね・・・。おお、会話がなりたちます。
受け止めるということは、同意するということではありません。「そうですね。」であれば同意になりますが、「そうなんですね」は相手のあるがままの意見を認めており、自分が別の意見を持っていても関係ないわけです。
会議では反対意見が出た際に、本当はまだ意見を広く集めるタイミングなのに対立意見のすり合わせが始まってしまうことがあります。「そうなんですね。他のご意見の方はいらっしゃいますか?」と進めれば脱線せずに済みます。
言われて悪い気がしない
他者からの発言に否定意見を返すと多くの場合、相手はイラっとしたりがっかりしたりと、心が揺さぶられてしまいます。たとえこちらの意見に正当性があっても結果として冷静な意見交換ができなくなったり、発言をしてくれなくなったりと、議論そのものが成り立たなくなることも考えられます。
「そうなんですね。(私は違う意見だけど)」
という返答は、相手を否定せず、また肯定もしていないが受け取ったという状態になるので、相手も平常心でいられるということになります。
正当性が理解できれば、心の動揺もなくなるんじゃない?
そう思うのも理解できるんだけど、発言内容と感情は分けにくいんだ。
否定意見を聞いて心が動揺するのは、発言はその内容にかかわらず、発言者の人格の一部の現れだからです。無意識的に
内容を否定された=自分を否定された
と認識してしまうということです。
夫婦のあるあるにも使える
夫婦の会話でよく起きる例が、奥さんは話を聞いてほしいだけなのに、ご主人は結論を求めたりアドバイスを返してしまうケースです。
ご主人が「へー、そうなんだー」
って返していたら奥さんは不満を抱かないのではないでしょうか?
上っ面で、ソーナンダーって言われるのも嫌ですよね?
そう!だから心から受け止めてあげることが大事だよ。
「そうなんですね」は受け止めた姿勢を示す代表的な言葉なので他には「なるほど」なども使えます。状況に合わせて言葉を選び受け止めた姿勢を示してみましょう。
まとめ
今回は会議中の発言に対応力が高まる3つのキーワードをご紹介しました。
「つまり」で要約力を発揮しよう
「そもそも」で根本に立ち返ろう
「そうなんですね」で相手を受け止めよう
これらを使うことで
話し合いをうまくまとめる力がつく
的を得た話し合いを展開できる
話し合いの中で険悪なムードを回避できる
という効果が得られるとご理解いただけたなら幸いです。
ただし、根底には対話の相手や会議の参加者を尊重する心が欠かせません。テクニックに溺れると、コミュニケーションがぎこちなくなったり、かえって不安を煽ってしまうことにもなるのでご注意いただき、是非有意義な議論にお役立て下さい。