「うわー、この会議つまらなーい」
「これだったらいちいち会議しなくても社内報でいいじゃん」
「また会議か、しょうがないから終わるまで我慢だ」
日々の会議に参加して、ふと「これって意味があるの?」と疑問を抱いたことはありませんか?特に若手社員の中には、会議が単調で、業務に本当に役立っているのかが見えづらいと感じる人も多いかもしれません。実際、やることが目的化してしまった無駄な会議もあることでしょう。若手社員にはどうする事も出来ずただただやる気がそがれていく、そんなこともあるのではないでしょうか。
こんにちは、当サイト(ワクワク会議研究所)の所長です。私は企業団体の会議に10年間取り組み、今は企業の会議改善コンサルタントをしています。しかしその過程では、有意義な会議を開催できるようになるまで沢山の失敗と学びを重ねてきました。
今回はどうにも発生してしまう、意味や価値を見出せない会議について根本対策を取れない若手社員の方を前提とした打開策を探ってみましょう。
- 意味がないと感じる会議の見方が変わる
- 自分にとって有意義なアクションがわかる
- 若手社員として今後の成長に活かせる
まずは多くの経営者が参考にするピーター・ドラッカーの論考から「3人の石切り工」の話をご紹介します。知っておくだけで会議だけでなく仕事や人生においても活かせる内容です。
ドラッカーってどんな人なんですか?すごい人なの?
具体的な紹介は後回しにするけど、1909~2005に存命だった経営学者で、現代社会の問題点を見事に予見している本質を突いた論考が沢山あるんだ。
ドラッカーの3人の石切り工の話
ある日、旅人が3人の石切り工に出会い、それぞれに「何のために仕事をしているのですか?」と尋ねました。3人の答えは次の通りでした。
1人目の石切り工:「給料をかせぐためだよ」
2人目の石切り工:「国中で一番の石切り工になるためさ」
3人目の石切り工:「みんながお祈りに使う大聖堂を建てているのさ」
3人は同じ仕事をしていますが、捉え方が違います。1人目はお金の代わりとして、2人目は自分の才能のため、3人目は使命や他者への貢献のためです。
やる意味を感じない会議では、自分なりの意味を見いだそうと考えてみてはいかがでしょうか?
わかりますよ。わかりますけど、私には意味がない会議に見えちゃっているんですから仕方ないじゃないですか。
おー、素直だね。確かにそう考える人もいる。じゃぁ丁寧に解説していくね。
おっと、その前に補足が必要だった。
原文においては、「仕事の捉え方」に焦点を当てた話ではなく、「仕事そのものが目指すもの」に焦点を当てた内容になります。今回はそれについての解説は省きますが、原文を載せておきますのでご興味がある方はご覧ください。
技能の分化―三人の石切り工の話がある。何をしているかを聞かれて、それぞれが「暮らしを立てている」「最高の石切りの仕事をしている」「教会を建てている」と答えた。第三の男こそマネジャーである。
第一の男は、仕事で何を得ようとしているかを知っており、事実それを得ている。一日の報酬に対して一日の仕事をする。だがマネジャーではない。将来もマネジャーにはなれない。
問題は第二の男である。熟練した技能は不可欠である。組織は最高の技能を要求しなければ二流の存在になる。しかし専門家は、単に石を磨き脚注〔原文ノママ〕を集めているにすぎなくとも、大きなことをしていると錯覚することがある。技能の重要性は強調しなければならないが、それは組織全体のニーズとの関連においてでなければならない。
この種の危険は、今日進行中の社会と技術の変化のために、きわめて大きなものになっている。高等教育を受けた専門家が急増している。技能も高度になっている。彼らのほとんどは、それぞれの専門知識によって組織への貢献を行う。そのため技能自体が目的となってしまう危険がますます大きくなる 。P.F.ドラッカー『マネジメント【エッセンシャル版】―基本と原則』上田惇生訳、ダイヤモンド社、2001年、pp.137-138
仕事や会議に目的意識を持つことの重要性
ここからは3人の石切り工たちの話を、日々の会議に置き換えて考えてみましょう。1人目の石工のように、「ただ参加しているだけ」と感じる会議では、どうしてもやる気はでないですね。しかし、3人目の石工のように他者への貢献を見据えて、「この会議は社会に役立つ未来を作るための重要な場」と考えることで、得られるものが大きく変わります。まずは正攻法を、その後でちょっとひねった工夫をご紹介します。
若手社員だと見えている範囲が狭いですからね。広く持てと言われても限界があります。
わかったから。まずは基本を押さえようって話。
会議の「目的」を考える
まず、会議に参加する際には、その会議の目的を自分なりに整理してみましょう。何のためにこの会議が開かれているのか、自分はどんな役割を果たせるのかを考えることで、ただ時間を過ごすだけの会議が、貴重な学びや成長の場になります。
例えば、新しいプロジェクトの会議ならば、その進捗や方向性を共有し、全員が同じ目標に向かって動くための調整が行われます。ここでの目的は、個々の意見や進捗を確認し、プロジェクト全体を成功させるための道筋を整えることです。この視点を持つだけでも、会議の意味が大きく変わってきます。
つまらなさが先に来ちゃってそんなこと考えられません。
自分に出来る範囲でいいんだよ。
あまりにもやる意味の感じられない会議なのであれば、逆にどんなところに意味の無さを感じるか、を整理してみましょう。いつかは会議やその一部を担当する機会もあるでしょう。やる気のない参加者を相手に、生産性の低い会議を行うか、参加者の能力を発揮してもらい有意義な会議ができるか、参考になるはずです。自分の将来の失敗の可能性を先輩方が体験させてくれている、と捉えることもできます。
た、たしかに、文句を言っているだけじゃ自分の身になってないか。
君の成長は会社にとっての財産であり、そこにこそ給料が支払われているってこと。プロ意識の話だよ。
参加者としての「貢献」を意識する
また、会議に参加する際には、ただ聞き手であるだけでなく、自分がどのように貢献できるかを考えてみてください。質問や意見を述べることで、会議に積極的に参加し、価値ある時間にすることができます。
いやー、発言のチャンス、狙ってはいるんですけどね。怒られたり、的外れな事を言って恥をかいたりしないかと、正直思っちゃいます。
よし、そんなこともあろうかと、これを紹介するよ
会議参加者のふるまい分析をする
若手社員であれば、会議の参加や貢献に不安も沢山あることでしょう。冒頭お伝えした通り、本当に無意味な、やることが目的化した会議があることも現実です。そこで思考を切り替えて参加者の分析をしてみましょう。
- 腕組みをしている人は、真剣に聞いている他に猜疑心や否定意見を抱いている(かもしれない)
- 語気が強く話が長い人は、自分の主張によって方向性をコントロールしたい欲求がある(かもしれない)
- 発言が穏やかな人は、個人的に答えを見出して落ち着いているか、あまり考えていない(かもしれない)
- 否定意見が多い人は、優秀さや存在感をアピールしたい(かもしれない)
- 座っている位置が机から離れている人は議論に乗り気ではない、または冷静でいたい(かもしれない)
なんですか、この(かもしれない)は。
決めつけてしまうと、想定が外れた場合に思考の余裕がなくなるからね。あくまで参加者のふるまいから心情を推察する練習をしてみようってことだよ。
確かに、参加者の表情、言動、しぐさに注目すると人間模様が見えてきます。
想像の域は出ないけど、これが後々有効なんだ。
会議参加者の表情、言動、しぐさから心情を読み取る練習をすると、自分が会議を主催、進行する際に介入のヒントになります。また会議以外でその方とどう接したらいいか、人付き合いのヒントも得られます。チームや社会への貢献という視座からは離れてしまいますが、なにも意味をなさない時間を過ごすよりよほど自分のためになることでしょう。
ドラッカーの教えが会議に役立つワケとは?
P.F.ドラッカー(Peter F. Drucker)
米国クレアモント大学院大学教授。1909年ウィーン生まれ。フランクフルト大学卒。ビジネス界にもっとも影響力をもつ思想家として知られる。東西冷戦の終結、転換期の到来、社会の高齢化をいち早く知らせるとともに、「分権化」「目標管理」「経営戦略」「民営化」「顧客第一」「情報化」「知識労働者」「ABC会計」「ベンチマーキング」「コア・コンピタンス」など、おもなマネジメントの理念を生み発展させてきた。2005年11月11日、他界。
『マネジメント【エッセンシャル版】―基本と原則』上田惇生訳、ダイヤモンド社
このようにドラッカーは組織の在り方を考えるうえで現代に今もなお大きな影響を与えています。ドラッカーの書籍、論考を学ぶと本質が何かを理解できるようになるので、コミュニティでも企業でも抑えるべき重要なポイントを見極めやすくなります。
例えば仕事の生産性について、同書籍ではこう書かれています。
基本的なこととして、成果すなわち仕事からのアウトプットを中心に考えなければならない。技能や知識など仕事へのインプットからスタートしてはならない。それらは道具にすぎない。
仮に会議で
「ストレングスファインダーを社員に取り組ませたら社員自身が自分の長所を認識できるので働きやすさが向上するのではないか」
と話し合っていたとします。この場合、ストレングスファインダーも、働きやすさも手段です。アウトプットを中心に考え直す必要があります。
えー、具体的だし、チャレンジングで素晴らしい議論じゃないですか
1つのアイディアとしてはいいけど、発案者が「ストレングスファインダー」だけを見ていて、まるで「ストレングスファインダー」をやりたいだけのようにも感じるよ。
それだと、手段が目的化しているってことになるんだ。
この場合、議論は
「前期より高い成果をあげる(アウトプット)ために、最も効果的なものはストレングスファインダーでよいか」
「前期より高い成果を上げるために必要なのは働きやすさの向上でよいか」
「そうであるならその理由は何か?そうでないなら最も効果的な手段は何か」
「最も効果的な手段を検討するためにどんな情報を集めたらいいか」
などのテーマであるべきです。
このように、ドラッカーのマネジメントを知ることは、組織が会議でどこに時間や労力を割けばよいかが整理しやすくなることにつながります。
自己判断の限界:思考の枠に閉じ込められないために
次に、自己判断について考えてみましょう。私たちはさまざまな状況で、自分の経験や考えに基づいて「これは無意味だ」「この会議は役に立たない」と判断してしまいます。しかし、この自己判断が、実はチャンスを逃している可能性があることに気づいていますか?
最近になって、一番面白いと思うようになったスポーツって何かある?
ボルダリングですかね。ほんのちょっとした凸凹を頼りに上ってくのがスゴくてよく見ています。
その前は?
前?えーっと、カヌーですね。特に激流を下るやつ。
この場合は好きなスポーツだけど、つまりさ、自分の判断って経験や知識が増えると変わる可能性が高いよね。個人の感覚的な判断は頼りすぎると視野が狭まっちゃうんだ。
思考の枠に閉じこもるリスク
自己判断が思考の枠に閉じ込められてしまうと、新しいアイデアやチャンスを見逃してしまうことがあります。たとえば、会議がただの「情報共有の場」と思っていると、それ以上の価値を見つけることが難しくなります。
実際には、会議の中で他のメンバーから得られるフィードバックやアイデアが、あなたの仕事に新たな視点を提供してくれることもあります。
自己判断を乗り越えるためには
自己判断の枠を超えて、新しいチャンスを見つけるためには、広い視野を持つことが大切です。自分の役割や仕事だけに固執せず、会議やプロジェクトの全体像を理解するよう努めましょう。他のメンバーとの意見交換やディスカッションを通じて、新しい視点や考え方を取り入れることで、自己判断の限界を乗り越えることができます。
会議を意味あるものにするための実践的なアプローチ
会社のために意味がある会議にする、というのはセオリーでまた経験の少ない若手社員には難しい側面があります。ここでは敢えて若手社員にもできそうなアプローチを挙げてみます。
- あの人(発言者)が発言の中で一番言いたい事は何だろうと想像する。
- 会議の良くない点をリストアップしてみる。自分ならどうするか考えてみる。
- 参加者のパワーバランスや関係性を観察してみる。
- 1つだけ、この会議を良くするために取り組めるとしたら何が効果的か、と考えてみる。
- 会社にとってではなく、自分の今後に役立ちそうな学びがないか探してみる。
一人で遊んでいるみたい。
まずは自分にとって有意義なものにしなくちゃね。次第にチームや会社にとって有意義なものが見えるようになるよ。
まとめ:会議を意味のあるものにするために
ピーター・ドラッカーの3人の石工の話に学ぶように、私たちがどんな目的意識を持って仕事や会議に取り組むかが、その成果に大きく影響します。目的を持たずに「ただ参加するだけ」では、会議は意味のない時間になってしまいますが、「この会議はチームの成功に繋がっている」「自分の成長に役立つ」と捉えることで、全く違った視点で参加できるようになります。
また、自己判断に頼りすぎず、他者との対話や新しい視点を取り入れることで、思考の枠を広げ、今まで見えなかったチャンスや可能性を掴むことができるでしょう。会議は単なる義務ではなく、自己成長とチーム全体の成功を導くための重要な場なのです。
- 意味がないと感じる会議の見方が変わる
- 自分にとって意味があるものになるよう捉え直してみる
- 社会への貢献の視点で気づけることがないか探してみる
- 自分にとって有意義なアクションがわかる
- 参加者の観察から学びを得る
- 将来自分が担当することを想定し、改善ポイントを探す
- 若手社員として今後の成長に活かせる
- 広い視野が持てなければ割り切って自分の得になる学びを探す
コメント