仕事の場で、議論がまとまらずに想定以上に時間が過ぎてしまうことってありませんか?話の脱線など無駄な内容がなくても、各自が解決策を模索し続けていても、思いがけず時間が過ぎてしまう。そんな時に重要な問題の工夫についてご紹介します。
こんにちは、当サイト(ワクワク会議研究所)の所長です。私は企業団体の会議に10年間取り組み、今は企業の会議改善コンサルタントをしています。しかしその過程では、有意義な会議を開催できるようになるまで沢山の失敗を重ねてきました。
今回の内容は、効率的な会議をする様々な手法の内、基本的過ぎて見落としがちな盲点と言えると考えています。初めて会議に参加する人も、沢山会議をこなしている人も参考になれば幸いです。
本稿を読むことで、会議や議論の時間を有効に使い、生産性を向上させるための手段を手に入れることができます。理解が深まると、自身の業務改善だけでなく、チーム全体のパフォーマンスも向上する可能性があります。
所長、私の会議はいつも問題が明確です。たぶん今回の内容は私には必要ないんじゃないかな。
それならそれで素晴らしい!簡単にチェックする感覚で流し読みしてみてね。
1番重要な視点
では早速一番重要な視点を簡単な数式でご説明します。
「5+7=x」
こんな問題があったとしましょう。答えは13ですね。
では、「y+7=x」となるとどうでしょう?
yが何であるか分からない限り、xの値を特定することはできません。
このシンプルな例から、一つの大切な教訓を引き出すことができます。それは、問題が不明確であれば答えを導き出すことは難しく、その逆も成り立つ。という事です。
仕事の場でもこの原則はそのまま適用されます。どの問題に対して解決策を見つけるべきかが明確に定義されていなければ、議論はあまりにも広範で非効率的になる可能性があります。一方、明確な問題定義があれば、議論は集中的かつ目的志向に進行し、解決策はより容易に見つけられます。
チューケンくん、最近の会議ではどんな議題があった?
えーと、先日出展参加した、「展示会の良かったこと、改善したいことを列挙する」です。
めっちゃ明確じゃないですか?
なるほど、確かに文章としては明確だね。じゃあその背景として、意見交換をすることで何を実現したかったの?
へ?そりゃ、今後のより良い展示会出展を実現したいってことじゃないですか?
「より良い」って具体的にどういうもの?
えーと、沢山来場者が来るとか・・・
ほうほう、ちょっと突っ込んだ質問になっちゃうけど、
1.なぜ出展しようと思ったの?
2.沢山ってどのくらい?
3.来場者が多いと何に良いの?
そうですねぇ
1.知り合いから聞いてとりあえずやってみようかって感じで
2.人数は・・・やってみないと分からないですし。
3.まぁでも、来場者が多いと盛り上がっていいんじゃないですか?
うん。そうか。仕事としてやるなら、将来の成果に対し繋がっていることが程度で分かる形でないと明確とは言えないな。ぜひ続きを学んでみてね。
つまり私たちは、議論で答えを見つけたい場合、その前に問題を明確にする必要があるという事です。議論が長引くのであれば、一旦「私たちはどんな問題に向き合っているのか」について話し合ういましょう。
では、具体的にはどのように問題を明確化すれば良いのか、問題定義のポイントをご説明します。
問題定義のポイント
問題は、組織や個人が目標を達成するための障害です。問題を確定させるためには、その本質や発生源を特定し、明瞭かつ具体的に述べることが重要です。この時、「5W1H」(誰が、何を、いつ、どこで、なぜ、どのように)というフレームワークが役立ちます。それぞれについて議論の参加者全員で確認しましょう。問題を正確に理解し、全ての参加者が共通の認識を持つことこそが、議論の基盤となります。例題では徐々に明確度を高めてみます。さっそく見てみましょう。
例 キッチン用品の商品化について
この表現はあくまでテーマを記述しただけで、問題の定義になっていません。
例 わが社の技術を応用して、キッチン用品の分野に進出するためにどんな商品を開発すればいいか
この表現では、保有技術の応用や、新分野への最初の挑戦という条件が加わり、さらに最終的に得たい答えが何かしらの商品であるというゴールも表現されて、定義が明確になっています。
例 キッチン用品のアイテム別の市場規模とそのメーカーを踏まえ、進出する候補を3つ決定する。
この表現では、開発という言葉を細分化した中で、プロセスの序盤に必要な市場調査から取り組むことが明確になっています。
例 5年後の販売開始を目指して(以下同上)・・・
この表現によって、期限が明確になります。それによって、議論の結果手順が明らかになった場合スケジュールが立てやすく、ひいては実行しやすさに良い影響を及ぼします。
この作業は議論の主体者である、上司やリーダーなどの提案者が議論よりも事前に特に行うべきですが、議論の最中に参加者側が疑問を持ち、質問を投げかけることでも明確にできます。慣れれば議論しながら同時に意識を向けることができますが、それまではしっかり時間を掛けましょう。
問題定義のステップ
会議の開催より事前に行うと良い問題定義を実際にやってみます。まずは思いつくままに話し合いたいことをあげるところからです。
働きやすさについて話し合いたいな
この一つ一つの言葉に注目しながら疑問を当ててみます。ツッコミを入れる感覚です。
働きやすさって具体的にどういうこと?
自分なりに言葉を具体化しておくことで、話し合いの際他の人の意見との違いを見つけやすくすることができ、議論のポイント整理が楽になります。真逆の「働きにくいってどういうこと?」も考えると対比によって具体化が進みやすくなることもあります。
働きやすさについて話し合う事で何を実現したい?
議論のテーマを手段と置いたときに、目的が何かを明確にします。「チームワークを良くしたい」などと考えが進んだら、働きやすさ以外にチームワークを良くする方法はないかと考えれば、議論に広がりを作ることができます。
誰と話し合えば実現したいことに近づける?
働きやすさやチームワークについて普段から問題意識を持っている人を参加者に揃えることで議論が進みやすくなる可能性があります。
そもそもなんの出来事から働きやすさに注目することになった?
出来事の事実から、個人的に「働きやすさが問題だ」と解釈しただけの可能性もあります。そのほかの議論のポイントを探すことができますし、出来事を参加者と共有することで解決へのモチベーションを高めることもできるかもしれません。
働きやすさへの問題意識は全社員共通?
この問題の影響範囲や効果の大小を検討することができます。どちらもあまり大きくないのであれば今向き合うべき問題は他にあるかもしれません。
まとめ
問題を明確化することがどれほど重要か、またどうすれば出来るのか、ご理解いただけたでしょうか?
明確な問題定義は、各々が同じ方向を向き一致団結することで議論を集中させ、時間を無駄にせず、より効率的な結果を導くことが可能となります。また、日々の業務、会議、議論が生産的で有意義なものとなり、結果的に個人と組織の成功につながります。
最後に、問題の明確化を実践する上でのヒントとして、以下の点を心に留めておくと良いでしょう:
当サイトでは沢山の会議手法をご紹介していますが、その本丸ともいえる内容となります。是非チャレンジしてみてほしいと思います。