「付箋って会議でどう使うの?」
「うまく使えなかったら恥ずかしい」
「とにかく話せば議論はすすむんだよ」
付箋は所詮、会議の道具でしかありません。ですが会議参加者の心理を踏まえて使用することで議論を効率よく進めることができます。ここでは付箋の種類や意味、使い方などを紹介します。
こんにちは、当サイト(ワクワク会議研究所)の所長です。私は企業団体の会議に10年間取り組み、今は企業の会議改善コンサルタントをしています。しかしその過程では、有意義な会議を開催できるようになるまで沢山の失敗と学びを重ねてきました。
- 付箋の多様な効果がわかる:付箋でできることがいろいろあるとわかり、会議進行の引き出しが増える。
- 付箋の具体的な活用方法がわかる:使いこなしのポイントがわかり、実践しやすくなる。
- 付箋やその他の道具について理解が増す:付箋を含めた道具の活用法が分かり応用させやすくなる。
付箋を使ったことがない方は、会議で実践するのに勇気が必要かもしれません。その場合は少人数の話し合いで試すなどで効果を実感するとよいでしょう。
なぜ最強なのか
付箋は会議で上手に使うことで、さまざまなリスクを減らすことができ有意義な議論の手助けになります。それは進行側にとっても参加者側にとっても効果があり、それゆえに当研究所では最強のものとしてご紹介します。
参加者の主体性を発揮させやすいから
会議で困ることとして、参加者があまり発言してくれないケースがあります。その理由はさまざまですが、人はそもそも安心した場であれば積極的になり発言も増えます。その点で、参加者が付箋に自身の意見を書き出すのは誰にも邪魔されない安心できる行為と言えます。また発言するのであれば、あたりまえではありますが言葉は目に見えません。ですが書き出すのであれば、目に見えるしその場に付箋として残るので参加している形跡にもなります。書き出す行為は読み手を意識して自分の内面を表現することになるので自然と主体的になります。
発言が少ない場合の参加者の心理についてはコチラをご覧ください。
【会議で発言しない人への対処9選】発言しない人の心理も踏まえて徹底解説!
発言より気が楽に関われるってことですね。
そうだね、参加者の気持ちを理解できると付箋の効果がわかりやすいでしょ。
時間短縮になるから
会議参加者が多いほど、多様な意見が出る可能性がありますが、一人ずつ意見交換をしていると議論に時間がかかってしまいます。場合によっては最初の発言を忘れてしまうこともあります。付箋を使い、一斉に書き出す時間を設けることで意見交換の時間を大幅に削減できます。
出来る限り付箋を使いまくったら大幅に時間短縮ですね。
いやいや、文字で表現することが苦手な人もいると思うから、話してもらうタイミングも必要になるね。
じゃぁ、社内チャットもあるしそこでじっくり意見を出してもらうというのはどうでしょう。
それもアリ。だけど違いを理解しておこうか。
社内チャットで、個人個人に意見を求めるのは実際に良くあることだと思います。ですが、仕事の合間で深く考えられていない意見も混じります。その点、会議の最中であれば今のテーマに集中してもらえます。
また、社内チャットでグループを作ってやった場合、意見が半永久的に残ります。その点で「私の意見が見られている」という自意識が働き、書き込みに躊躇する人もいるでしょう。
さらに、意見をA、B、C、Dと連ねていいのか、それぞれの意見に何かしらレスポンスをしたらいいのかがわかりづらく、迷いが生じると「後でいいや」となり、結局あまり意見を集められないこともあります。
付箋とチャットは別物と理解して活用するといいでしょう。
発言が長い人、偉そうな人、遠慮がちな人、皆同じ条件になるから
会議で良くあることとして、特定の人の発言時間が長い、権力のある人の意見に説得力を感じてしまう、発言が苦手な人が発言タイミングを逃してしまう、などがあります。沢山の発言があった場合は、最初の発言ほど時間がたつので印象に残りづらいということも起こります。意見毎に重要度が変わってしまい必要な議論、十分な議論が起こりにくく、結果として成果を生み出せない会議になってしまいがちです。
こういった場合に付箋に意見を書いてもらうと発言が長い、権力、発言が苦手、などの個人差は関係がなくなり、時間がたった発言も一律で同じように取り扱うことができます。
視覚的に分類できて、参加者が同じイメージを共有しやすいから
一つのテーマで話し合っていても、個人個人で言葉をどう理解するのかは意外とズレています。出来る限り合わせられるものは合わせて議論をしたいところです。意見の全てを付箋に残し、グループ分けをして貼り出すことでどの意見が多かったかなどが見た目で分かり、参加者一同で見た目を共有できます。別テーマの議論は付箋の色を変えるということも有効です。
見える化というやつですね。
だね。
全体を見渡せて、付箋同士の関係も理解しやすいから
配布の紙資料やプロジェクターでのパワーポイントはページが変わってしまうと、前の情報が視覚から外れます。付箋で模造紙や壁などに貼り出すと、全てを見渡せるので一覧性が高まります。違うグループ分けの付箋なども場所の制約を受けずに表示できるので、関係性を意識した貼り付けが可能です。
ホワイトボードや模造紙に貼るのであれば、付箋と付箋を線でつないだり、枠で囲ったりと書き足せるのでより見やすくできるよ。
単調な会議でも変化や刺激になり意見交換の手助けになるから
参加者全員が積極的な会議は理想ですが、なかなかそうもいきません。聞くことに積極的な参加者もいる場合があり、特定の発言者が話し続ける単調な会議は珍しくありません。ところが付箋に書き出し、壁などに各自で貼ってもらい、全員で全体を眺める時間帯を用意すると座ったままにならず行動に変化が起き、意見交換のきっかけや気分転換を促すことができます。
付箋とは
ここからは会議に適した付箋をご紹介します。その補助として、どのように付箋が生まれたのかにも触れておきます。
豆知識 付箋は偶然の産物
1960年代、3M(アメリカ、ミネソタ州にある化学技術で生活を豊かにすることを目指す企業)の科学者であるスペンサー・シルバーは、研究所で接着剤の研究をしていました。その当時、より優れて強い、丈夫な接着剤を開発しようとしていたとのこと。 研究の過程で、彼は奇妙なものを発見しました。表面に軽くくっつくものの、しっかりとは接着しない接着剤です。目指していたものとはまったく異なる性質のものでしたが、新しい接着剤を開発することも、研究者としての任務の一部だったようです。
そして、3Mのもう1人の科学者、アート・フライの出来事につながります。教会の聖歌隊のメンバーであったフライは、小さな紙切れをしおりとして、次の礼拝で歌う讃美歌のページに挟んでいました。ある日曜日、いつものように讃美歌集のページをめくったところ、目印に挟んでいたしおりがひらりと滑り落ちてしまいました。またか…と思った瞬間、フライの頭の中にひらめくものがありました。ページを破ることなく紙にくっつくしおりがあればいいことを思いつきました。
最初は接着剤自体を研究していたところ、2人の科学者によって最初から紙に塗られていれば、製品自体が貼ったりはがしたりできるので、コミュニケーションの道具として使えるのではないかと開発を進め多くの人に使われる道具になったんだそうです。
付箋の種類と選び方
3Mの付箋はポスト・イット®と呼ばれますが、今では様々なメーカーから付箋が発売され、カラーや粘着度合の違いでバリエーションも様々です。製品の違いに触れた後、特に会議で有効に使うためのコツをご紹介します。
一般的な付箋
一般的、というのは製品に「強粘着」の表示が無いものです。会議では、壁に模造紙を貼りその上に貼るという使い方になります。使っていない机に貼り上から見下ろすのであれば模造紙を用意することもなく使用できます。
注意点
壁やホワイトボードに貼る場合、凸凹していたり、ホコリや油がついている為、この手の付箋は使用に向きません。
貸会議室などでは、壁に画びょうの穴やマジックの汚れが残ると注意されて最悪の場合は使用させてもらえなくなる場合もあると思います。対策としては厚めの模造紙をメンディングテープなどで貼り、その上に付箋を貼るといいです。
強粘着
一般的な付箋には向かない、凸凹の壁やホワイトボードに剥がれを気にせず貼ることができます。最近ではリモート会議ように大きなディスプレイがある会議室もあると思いますので、ディスプレイを壁がわりに貼ることも可能です。
注意点
あまり聞いたことのないメーカーの強粘着付箋だと、剝がした際に粘着剤が残ってしまう事があるかもしれませんのでご注意ください。
また、模造紙に貼った場合、剥がす際に模造紙の表面を傷めたり、破けてしまうこともあるかもしれません。
静電式
粘着剤ではなく、静電気でくっつくタイプの付箋です。剥がして貼っての繰り返しが、上記の付箋よりも可能です。ですので、付箋の位置を話し合いの中で頻繁に変えるような場面であればこのタイプの付箋が役立ちます。また、付箋全体がくっつき、ペラペラと浮いてしまうことがないので、何枚も貼り付けた際の見た目がスッキリして一覧性が高いと言えます。例えばガラス窓などに貼ると栄えます。
注意点
使っているうちに静電気の効果は薄れてしまいます。
付箋の束は静電気でくっついているため、束から重なったまま、気づかず剥がしてしまうこともあります。
後述しますが、会議ではフェルトペンが有効ですが、水性だとこすれた際に消えてしまい、手や袖口の汚れになるケースがあります。
表面の性質上、油性ペンでもインクが乗りにくい場合があります。
付箋のちょっとした工夫
会議の進行で状況に合わせて、付箋やその他の道具を選択し使用できると意見交換がスムーズになる分参加者の満足度は高まり、時間内での議論に生産性が高まります。そこでより上手く使うための工夫をご紹介します。
大きさとペンの選択
後述の工夫にも関わりますが、大きすぎる付箋は長い文章で書きこむことを暗黙の内にOKとしてしまいます。それだと後で全体を見渡したい時に理解しにくい付箋になります。そこでおススメなのは
- フェルトペンを使う事をルールにする
- 状況に応じて適度な大きさの付箋を使用する
の2点です。例えば鉛筆やボールペンで書かれてしまうと、一覧する時に字が薄かったり、小さい文字だったりで見渡しやすさを損ねます。フェルトペンを使えば自ずと大き目の文字になります。
大きすぎず小さすぎないサイズの付箋を使う事で長すぎない意見、短すぎない意見を書き出してもらいやすくなります。特段の制約が無ければ7cm×7cmくらいの付箋を使ってみてはどうでしょうか。
「後で一覧しますので、多少離れても読みやすい大きさでお書きください」
と添えるとなお良しです。(それでもボールペンで小さく書く人もときどきいますが)
一枚一意見
付箋一枚に、一つの意見(主張)を書くことをアナウンスしましょう。人によっては当たり前と感じるかもしれませんが、時々いくつもの意見をまとめて書く人がいます。それだと後でグループ分けすることが難しくなります。
テーマを適度に絞る
「先月のイベントについてご感想をご記入ください」
のように促すと、長い文章で書かれてしまいがちです。
「先月のイベントについてご感想を簡潔にご記入ください」
「先月のイベントの予算配分について、まずは〇、△、×を書き、補足を余白に書いてください」
など端的に表現できるようなテーマ設定をすると見やすくなります。
無記名でいい
特別な場合を除いて、記入者がわからないように無記名OKにしてあげましょう。発言の責任を取らされることを心配しているケースなどに有効です。心理的ハードルが下がるので率直な意見を集めやすくなります。
斜めに剥がす
静電式ではない付箋についてですが、束から剥がす際、真下から真上に剥がすと巻き癖が付き、貼った際にペラペラ浮いて見づらくなります。数枚であれば気にならないかもしれません。ですが沢山付箋を貼った場合に見渡しにくさが増してしまいます。
角から斜めに剥がすことで巻き癖を抑えて剥がすことができます。
必要以上に多色にしない
付箋の色をとりどりにすると、鮮やかさが増し、会議に華やかな刺激が増しますが付箋ごとのまとまりが分かりづらくなります。
気づいたことを黄
学んだことを青
これから実践したいことを赤
などのように、テーマごとに色指定をすることをおススメします。
どんなペンで書けばいいか
すでにご紹介している事ではありますが、粘着式、静電式問わず、油性フェルトペン(名前ペン、マジック)をおススメします。
逆に、鉛筆、ボールペンは一覧性に沿わないのでおススメしません。水性フェルトペンは静電式の付箋には不向きです。
貼る場所の選択
会議で付箋を貼る場所としては、壁、窓、ホワイトボード、模造紙、テレビモニター、机が考えられます。
壁 | 窓 | ホワイトボード | 模造紙 | テレビモニター | 机 | |
一般的な付箋 | △ | 〇 | △ | 〇 | 〇 | 〇 |
強粘着 | 〇 | 〇 | 〇 | △ | 〇 | 〇 |
静電式 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
準備の手軽さ | ◎ | ◎ | 〇 | △ | 〇 | 〇 |
どこにでもあるか | ◎ | △ | 〇 | △ | △ | 〇 |
広さ | ◎ | 〇 | 〇 | △ | △ | △ |
本来の使い方を邪魔しないか | ◎ | 〇 | △ | 〇 | △ | △ |
付箋以外のスペースに書けるか | × | × | ◎ | ◎ | × | × |
会議後の保存が可能か | △ | △ | × | ◎ | × | × |
付箋を貼った後の進行
付箋を貼り出すということは、参加者それぞれの意見やさまざまなテーマなどを一覧的に見える化するということです。客観的に全体を全員で見渡せている状態ですので改めて話し合いを進めることになります。進行に戸惑うことがあったら、今一度議論で何をゴールにしていたのか、何の目的で議論を始めたのかを確認しましょう。例えるなら
「付箋を貼り出したのは地図を広げた状態であり、終着点を確認する」ということです。
それができたら、ルートを決めることができるので
この後議論するべきことは何か?や、付箋によって結論として言えることは何か?
などの考えるべきことが見えてきます。もしも心配でしたら参加者に
「改めて確認ですが、私たちは何の議論をしていましたっけ?」
「これらの付箋から私たちは次に何をすればいいと思いますか?」
と問いかけてもいいでしょう。ヒントが掴めるはずです。
記録方法
付箋は基本的に使い終わったら廃棄することになるでしょう。模造紙に貼るのであれば模造紙ごと取っておくことができますが、近年ではスマホで写真を撮ればデータで見返せるので模造紙の長所はあまりないかもしれません。
付箋を貼った背景に、参加者に集まってもらい写真を撮っておくと顔ぶれも記録として残せる点でおススメです。
余談 リモート会議との違い
ここまでお読みいただくとお感じになるかと思いますが、リモート会議では、それぞれが違う場所で座ったまま(定位置のまま)議論をするので付箋ほどの効果を出せるツールがありません。似たような機能はあるものの、参加者に行動の動きが出る会議はリアルの会議にしか出せない特徴です。
一方で、googleスプレッドシートなどをリンクシェアして、一同で書き込めばテキストデータとして意見を残せるのはリモート会議のメリットになります。
それぞれの長所を活かしてより良い話し合いができるといいですね。
まとめ
- 書いてもらい、貼り出すという行為が、会議参加者の心理を踏まえて議論を充実させることにつながる。
- 使いこなしのポイントがあり、付箋の効果を大きくすることができる。
- その他の道具についても参加者の心理を踏まえた選択の仕方がある。
沢山の効果を参加者の心理と照らし合わせて紹介しました。全てを理解して実践するのは大変かもしれません。それよりも、試しに使ってみて参加者の表情や言動に注意を向けながら改善を重ねるとよいでしょう。
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